橘カヅヲ後期作品


花曇りのち晴れ

雲が早いね?
もうじき雨だ

おひさまは
厚い雲の帯に
見え隠れ

昼間二人で歩くのは
何ヵ月ぶりかな?

こんな天気でも
散る花びらを浴び
はしゃぐ僕

さっきから
口を間一文に閉じ
黙ってうつ向き歩く君

チョイチョイ

袖の肘に抵抗を感じる

振り向くと
君は自分の唇を指差す

キスしてほしいの?

おもいきり首を横に振る君

べー

君のベロの上には
一枚の桜の花びら

悪戯っ子の微笑み

唾液で湿った花びらを
僕の頬にペタリ

そして一言

エンガチョー!

優しい陽の光が
僕のハートに射し込んだ


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シアワセ阿多福


マリちゃん薬塗ってあげようか?
とどかない処塗ってあげようか?

大丈夫
目を瞑って塗るからさ
はずかしがらなくてもいいよ
絶対に開けないから

さあいくよ
マリちゃんのお尻に跨り
軟膏ちょっと手々に出し
さあ福笑いのはじまりだ

もっと上?
もっと右?

ほんとは目を瞑っていても分かるんだ
僕の手は背中のツブツブ感じてる

けどまず間違えるんだ

すると僕の背中に君の踵がヒットする

手加減なしだね?
少し声が出なかった

痒いの治るといいね?
紅いツブツブの治るといいね?

夏には海にいこうね?

軟膏塗った僕の手は
指紋がすっかり消えてるや




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夢のつづき

朝パンチ
今朝はご機嫌
ななめだね

昨日は一緒に
お酒をのんで
楽しい時をすごし
とてもナイスな
二人だったのに

『裏切ったでしょ?』

今なんて?
朝からへヴィにのしかかる

『浮気したでしょ?』

全くないとは
言い切れないが
昨日の今日では
ありえない

何を根拠にいうんだい?
さっきまで
一緒に寝てたぢゃないか

『あたしみたの』

それいつのはなし?
きっと人違いだよ

『はっきりみたの』

朝から強制脳みそ全開

『裏切ったのね?』

いったい
どこで見たというの?

『夢で違う女とキスしてた』

夢のつづきは
突然重く現実にのしかかる

『ムカつくわ』

そしてふたたび
朝パンチ



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鳥目ハニー

また電気が消えたよ

君の部屋を出て
名残惜しく見上げると
部屋の電気は消えている

いっしょのときも
その明るさの苦痛に
耐えていたんだね

そうだ
キャンドルを持ってゆこう

二人きりのこのときは
ほんのり灯りで十分さ

みてごらん
幻想的な灯火は
君をその苦痛から解放するよ

君は笑顔で寄ってきて
フッと一息

・・・消すんだね

一人よがりの感傷は
君の心に響かない
この真っ暗な部屋も
君の闇に比べれば
明るすぎたんだね

痛てっ
スカルのピアス
踏んじゃった・・・



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ヒトミシリン

はじめはね
機嫌が悪いと思ってた

目も合わせないし
あまり喋らない

もう一年以上
恋人同志なのに

するんだね?
人見知り

そんな時は
いつも買ってあげたよね
棒のアイス

ちめたい・・・

二人の会話は
いつもそこから
はじまるね

アイスの後の
一服も
君の緊張を
ほどいたね





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そういえば
見たことないな
君のなみだ

映画をみても
テレビをみても
いつも泣くのは
僕ばかり

そうだ
玉葱切ってみて

君は用意したね
水中めがね
鼻まで隠れるやつ

でもさ
シュノーケルは 必要ないよね

あれ以来
なみだ枯れ果てたのかな

ちがうねきっと
僕はわかるよ
部屋の湿度が
一度だけあがるとき
君のなみだを感じるから

なみだは揮発し
部屋に雲をつくる

泣いてないから
言えないよ

泣かなくていいよ
と言えないよ

ただ雲がいつも
頭上を流れてる

曇り晴らすことは
たぶん僕にはできない


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猫の三秒間

暇だね雨だし
することないね

お金もないし
ガソリンも入ってない

君はなにしてるの?
それはなに?
テレビを見ながら
なに書いてるの?

後ろから
君の
手元を除きこむ

猫よ猫!
もう見ないで・・・

相変わらず
下手な絵だね

そうだ!
三つ数えたら
お互いしたいことを
同時に言おう!

二人正座の膝を
つき合わせ

さん、にぃ、いち・・・

『セックス』

と僕

君は言ったね

『ミャー』

なにそれ?





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彼女グルーピィ

今日も来てくれたんだね

フロアにスポットがあたると
いつもの場所にポツンと一人立っている彼女

午前四時
出番を終えてむかう彼女のアパート
タクシーで二千円弱

暗い部屋の真ん中には小さなコタツ
いつものようにポツンと座っている彼女

今日も来てくれたんだね

「だってファンだから」

「サイン書いてやろうか」

「べつにいらない」

「なんで」

「なんかムカつく」

「なんだよそれ」

もうすぐ夜明けだ
今日は生ゴミの日だったね

鼻唄まじりにゴミをまとめる

「やだ歌わないで」

「どうして」

「なんかもったいない」

近くて遠い二人の距離

水に濡れた煙草のヤニが
いつまでも鼻について消えない



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OMINUGUI

捨てるね?
ホント捨てるね?
見ていて気持ちがいい
不安にもなる
たまるゴミ袋
僕の居場所がなくなっていく
 
大丈夫
無機質なものだから
思い切れるの
 
君は言ったね?
 
思い入れや
思い出は
ただの物質として
捨てられる
 
大丈夫
感情はそんなにすぐに
捨てないから
 
そう言って
ゴミ袋を抱えて
自分の居場所をつくる
僕の手を握ってくれたね?
 
冷たい手だね?
抱えたごみを
落としそうだよ
 
でもね
あなたの気持ちが
たまに
無機質なものに
思えるの
 
本当に冷たいのは
君の手でなく
僕の心だね?


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『マカロニの花

『咲くかな?今日は・・・』

無邪気に見つめるプランター
何を植えたの?
咲かないね

優しく僕は問掛ける
君は微笑みかえすだけ

作り笑顔が素敵だね
瞳の奥がぎこちない

くる日もくる日も咲かないから
ある日僕は考えた
何が植わっているのだろうと

君に内緒で掘ってみる
君がトイレのその隙に

あれこの筒はなんだろう?

マカロニだ!

土のついたマカロニだ

愛しい君へ

水を少しやりすぎだね

土の中ではアルデンテ

今日も君は見つめてる
無邪気に見つめるプランター

『咲くかな?今日は・・・』

咲くといいけど咲かないね
咲けばいいのに咲かないよ

咲かせてみたい
マカロニの花・・・

僕は君に気付かれぬよう
今食べたみかんの種を
そっと土に埋めるのさ


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